ウォータージェット工法は、水を使って対象を加工していく工法です。その際にはもちろん、大量の水が発生し、その水は加工された対象物が含まれているなどして、そのままでは排水などができないケースが大半です。
ここでは、ウォータージェット工法で生じる汚れた水の排水処理の方法などについて、紹介していきます。
初めに、ウォータージェット工法ではどのくらいの水を使うのか頭に入れておきましょう。ウォータージェット工法施工時に使う水の量は、1日でポンプ一台あたり約5,000~6,000リットルです。
ちなみに、一人暮らしの家で1カ月に使う水の使用量が約8,000リットルと言われているので、一人暮らしの生活用水のおよそ3週間から1ヵ月分を1日で使用すると考えると、イメージしやすいのではないでしょうか。
ウォータージェット工法で使用する水は、一般的な水道水です。これをポンプで超高圧に加圧して噴出することで対象物を削っていくわけですが、作業によって使用された水は対象物の成分、金属やコンクリート片などが含まれたり、アルカリ性を含んだりすることによって、濁った状態となります。濁った水は、そのまま排水すると環境汚染にもつながりかねないため、排水基準を満たすように処理を行ってから指定された排水路に排水をすることが、水質汚染防止法や各自治体などで定められています。
ウォータージェット工法における排水基準は、水質汚濁防止法や各地方自治体によって、基準値が定められています。排水基準の項目は、水素イオン濃度(pH)と浮遊物質量(SS)がメインとなります。
<表:関東圏各地方自治体で定められている排水基準>
地方自治体名称 | 水素イオン濃度(単位:PH) | 浮遊物質量(単位:ℓ/MG) |
---|---|---|
東京都 | 5.8以上8.6以下 |
120 |
神奈川県 | 5.8以上8.6以下 |
70 |
埼玉県 | 5.8以上8.6以下 |
180 |
千葉県 | 5.8以上8.6以下 |
200 |
茨城県 | 5.8以上8.6以下 |
200 |
栃木県 | 5.8以上8.6以下 |
200 |
群馬県 |
5.8以上8.6以下 |
排水量により変動 |
排水の際は、以下に紹介するような方法を用い、基準値以下まで作業後の水を処理する必要があります。
ウォータージェット工法における排水処理には、いろいろな方法があります。現場に応じた方法を用い、処理を行っていきましょう。
ウォータージェット工法で使用した水は、作業区画の側溝などを伝い、集まってきます。それを吸引器で吸引して回収、処理を行うための「ノッチタンク」と呼ばれる水槽にまとめていきます。
もしノッチタンクまでの距離が遠い場合は、中継が必要です。別途水を運ぶための水槽などを用意し、そこにまとめたものをノッチタンクまで移動させて処理します。
ノッチタンクに集められた水は、タンク内で「pH調整機」を使用し、水素イオン濃度を調整。併せて凝集沈殿剤を使用し、水の中にたまった濁りを沈降させ、浮遊物質量を調整します。
なお、ノッチタンクは基本的には2つ以上を用います。一つのタンクに水をためて処理している間に別のタンクに水をためていくという形で処理速度をアップさせることで、より効率的に作業を進めていきます。
基準値以下にまで処理された水は排水してもいいことになるので、現場で指定された排水溝に流していきます。処理の方法には、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を使用した調整処理もあります。硫酸アルミニウムは水中のアルカリ成分に反応して中和をさせるだけでなく、その際に濁りも吸着していく作用があります。それをうまく使うことで、より効率的に濁りを取り除いていけるのです。
また、取り除いた汚れはノッチタンクの底に蓄積しています。それを吸引車で集め、作業後に産業廃棄物として正しく処理を行っていきます。これがウォータージェット工法で使用した水を処理していく、一連の流れとなります。
ウォータージェット工法は水を使って作業を進めていく、非常に環境に優しい工法だと言われています。ただし、それは適切な排水処理をしているからこそ、当てはまるものです。ただ作業だけを行い、後始末を正しく行わなければ、逆に環境破壊につながりかねません。作業の際は、後の処理に関しても正しい知識を身につけ、対応していけるように心掛けましょう。
また、こうした処理設備を所有するのはコストもかかるものです。一方で、ウォータージェット工法を専門にしている加工業者などもあり、そうしたところは作業のセッティングから後始末まで正しく行ってくれるので、必要であれば、そうした業者に依頼を行うといいでしょう。
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